当面の目標
音声作品を形成するコンテンツは、大きく分けて
- 音声データ
- カバーアート
- タイトルロゴ
になります。これらを揃えるためには色々とやることがあるのですが、当面の目標はメインコンテンツである音声データを作成するために
「声優さんに依頼を出して、それを受注してもう事」
になります。色々と良きにはからってくれる声優さんもいらっしゃいますが、依頼を出すためには最低限、「台本」「用途」「声質」「費用」「録音方式」「音声データの形式」「編集の要否」「希望納期」を伝える必要があります。ざっと並べてみましたが、多いですよね・・・。詳しく説明していきます。
0. なにはともあれ
サークル名は考えておきましょう。勢いで決めてしまっても問題ないですし、めんどうな場合は普段SNSなどで使っている活動名でもよいですが、これから色々なクリエイターさんのお世話になりますので、「サークルXXXXのYYです」と名乗れた方がスムーズに事が運ぶかと思います。これから作る音声作品はこのサークル名のもと発表していくことになります。
1. 台本
最初にして最大の難関です。「一から自分で書く!」という剛の者はそもそもこんな記事は見てないと思いますが、「こう書け」というスタンダードがあまりなかったりもしますので、ゼロからのスタートはやはり敷居が高いと感じる方は、勉強代だと思って短め(10分程度、セリフ字数2,200字位)のシナリオを外注してしまい、納品されてきた台本の書式を参考に、自分でオリジナルのシナリオを書いてみるのが早いかと思います。
3,000円位で「音声作品用の台本作成」を行ってくれるサービスがSKIMA等に多数存在しますので、サービス提供者の実績や得意なジャンルなどプロフィールを参考に選び、依頼を出してみましょう。キャラクタの簡単な説明と、入れて欲しいシチュエーションを箇条書きで伝えれば、さくっと書いてもらえるはずです。手前味噌ではありますが、私も同じサービスを提供してますので、ご参考までに。
ここで注意したいのは、声優さんによってはNGな演技がそれぞれある、ということです。割と見かけるのは、喉への負担や周囲への影響が大きい、悲鳴や絶叫、嗚咽や号泣などです。NGな演技の一例はプロフィールに記載されていますので、意中の声優さんが居る場合にはシナリオ作成前に良く確認しておきましょう。ぎりぎりのラインだったりする場合には、その表現を諦めるか、他の声優さんを探すか、一旦台本を完成させてから相談することになります。全体を通しての判断になりますので、台本完成前に相談することは控えましょう。
2. 用途
声優さんには、収録してもらう音声をどのように利用するのか、あらかじめ伝える必要があります。販売するのであれば「販売用」と伝えてください。販売はしないまでも、フリー音声等で無償公開する場合は「無償公開用」などで伝わります。販売も公開もせず、あくまで個人で楽しむのであれば「個人観賞用」になります。あわせて、この作品が「全年齢向け」の作品なのか、「成人向け」の作品なのかも伝えましょう。
声優さんにもよりますが、大抵の場合、用途によって依頼金額が変わってきます。無償公開の場合、費用は控えめにしてくれる傾向にありますし、「成人向け」の場合は逆に費用が高くなる傾向にあります。当たり前のことですが、「成人向け対応可」と書いていない声優さんに成人向けの依頼をするのはやめましょう。また、取り決めた内容は、声優さんの許可がもらえない限り後から変更する事はできませんので、よく考えてから伝えてください。
ここで注意したいのは、声優さんによっては、「個人観賞用は受け付けていない」、その逆に「個人観賞用しか受け付けていない」など色々と条件がありますので、依頼前に声優さんのサイト等に記載されている条件を良く確認しましょう。
3. 声質
一番楽しい瞬間かもしれないですね。どの声優さんも自分で出せる声質のサンプルを沢山掲載されています。それらを参考に、「サンプル音声xxxxの声質で」と伝えましょう。「サンプル音声xxxxの声質で気持ち低め」などと依頼すれば適時調整してくれる声優さんも居ますが、サンプルに全く無い声質を指定することは、双方の基準があいまいな状態になり認識不一致の最たる原因になるので控えましょう。声優さんのプロフィールに「サンプルにはありませんが、ロリ声もOKです」などと書いてあれば、事前にサンプルを提供してもらえないか、一度相談してみても良いかと思います。
ここで注意したいのは、実際に聞こえてくる音声は、収録環境、再生環境、体調、編集などによって大きく変わり、サンプルはあくまでサンプルとして、ある程度の乖離がある事を心にとめておく、ということです。とはいえ、凛々しい女騎士のサンプル音声を指定したら、萌え萌えのロリ声で納品されてきた、なんてことはコミュニケーションミスでもない限りそうそう起こらないのでご安心ください。
4. 費用
シナリオや演技の内容にもよりますが、セリフ字数 2,200字前後で10分程度の尺になり、IIKOE等で依頼を出す場合、1文字につきx円という計算になります。字数のカウントには、ト書きや演技指示などは含めない事が一般的かと思います。また、セリフ中の句読点や3点リーダー(…)などは基本的に字数に含まれます。成人向けの音声ですと、1文字あたり2円~5円くらいがわりと見かける値かと思います。費用が倍以上変わってきますので、よく考えてから依頼をしましょう。これは私の主観ですが、費用の高低は演技や音声の品質と比例するわけではないので、作品のイメージにあった「声質」と「演技」の声優さんであるかを基準に、予算と相談しながら決めましょう。
いわゆるリップ音(文字に起こせない音声)は、@(アットマーク)の数で長さを指定するケースが多いかと思います(そうでない方もいらっしゃいますので、記載がない場合は事前に確認してください)。リップ音10秒なら、
(リップ音:10秒)@@@@@@@@@@
で指定します。1秒につき@がいくつ必要かは声優さんによりますが、2文字から4文字くらいがよく見かける値かと思います。台本全体に占める@の割合が多すぎる依頼は受注してもらえない可能性が高くなりますので、多くても全体の2割程度に抑えましょう。
閑話休題
ここからは小難しい話がつづきますので、可愛い女の子でも眺めていったん休憩しましょう。

はい、可愛いですね。
5. 録音方式
要は「モノラル」「ステレオ」「バイノーラル」のどれにするか、という話になります。後者の方が表現は豊かになりますが、初めての音声作品であれば迷わずにモノラルを選び、慣れてきたらそれ以外の選択肢を考慮しましょう。特にバイノーラルは、製品化するまでに必要な編集作業の難易度が爆上がりしますし、台本もあらかじめバイノーラル収録を考慮して作成する必要があります。また、費用についてもバイノーラルの場合追加料金となる事がほとんどです。なにより、バイノーラルマイクは安くても十数万円以上はする高価な機材であり取り扱いもデリケートなので、宅禄という制限上、対応していない声優さんも多くいらっしゃいます。バイノーラル録音でないと表現できないシナリオであるなら話は別ですが、それ以外の方は黙ってモノラルを選びましょう。
6. 音声データの形式
これも色々ありますが、「48000Hz 24bit wav形式」と伝えれば当面は問題ありません。後に編集技術や環境が向上した際にも、このレベルで収録されていればなんとかなります。より音質にこだわった作品の場合は、96000Hz 24bit wav でも良いかと思いますが、扱うデータ量が凄い事になりますので、それなりの覚悟と経験、そして編集環境が必要です。間違っても 44100Hz 16bit wav等で納品されてしまわない様、事前にしっかりと希望を伝えましょう。とはいえ、これでもCD音源と同等の品質なので、聞いただけで違いが判るかといえばそれはNOなのですが、より複雑な編集をしていく場合に不安がある、という意味合いで捉えてください。
7. 編集の要否
収録してもらった音声データを、そのまま納品してもらうか、声優さんの方である程度のノイズ除去や聞きやすいように音量調整してもらったデータで受け取るのか、という話です。大前提として、収録してもらった音声データには編集処理(ノイズ除去・音量調整・シーン毎の分割)を施す必要があります。収録されたままの音声データ=販売に耐える状態の音声データではありません。この辺りの話は長くなりますので、次の記事で詳しく説明します。
自分で一から編集する覚悟や技量があるか、編集を専門に行っている方に依頼する場合、声優さんには「NGテイクのみカット、他の編集は不要」とお伝え下さい。編集によって作品の雰囲気は想像以上に大きく変わりますので、編集を自身や外注で行う場合、オリジナルに最も近い状態のデータが手元にあることが望ましいです。
声優さんによっては、追加費用でノイズ除去・音量調整・シーン毎の分割作業を行ってくれる場合があります。とはいえ、何をノイズ(=異音)と感じ、どの程度まで許容できるのかは人それぞれですし、音量についても、なにをもって聞きやすいかとするのか、その基準はあいまいになりがちです。なにより、声優さん側も編集が専門ではなかったりもしますので、注意書きをよく読んでから依頼しましょう。間違っても、自分の理想の形で納品されてくると思ってはいけません。
8. 希望納期
今までの内容を全てお伝えしたら、受注の可否と納期の判断を声優さんの方で出来る様になります。xxxx字でyy日位、という納期目安を書いている声優さんも居ますが、現在の収録状況も併せての判断になります。なので、希望納期は「応相談」として声優さんに対応可能な日程を聞いてみるか、最低でもこのくらいまでには来て欲しいという目安がある場合には、「希望納期:xx月末(応相談)」としておけば良いと思います。
とても大事なことなのですが、「収録にはこちらの想定以上に時間がかかる」とうい認識を持つことが必要です。これを読んでいる貴方が依頼しようとしている声優さんですから、人気の高い声優さんの可能性もありますし、なにより宅禄という性質上、日々十分な時間を取って収録ができるわけではなかったりもします。ショートシナリオでも1か月以上は普通にかかる、くらいの心構えが大切です。天地がひっくり返っても、納期内であるにも関わらず「早く納品して下さい」とか催促しないように。声を作り、セリフに感情を乗せて読み上げる行為はクリエイティブなものですから、コンディションを調整し集中力を維持する必要があります。単純作業と違って、急げば早く出来上がるという事は絶対にありません。不要な催促はメンタルにも影響しますので、品質が下がることはあっても、決して上がることなどないのです。
9. 実際の取引
最初の依頼は、IIKOE等の音声依頼サイトの利用を強くお勧めします。理由はいくつかありますが、
- 支払いを安全かつ円滑に行える
- 声優、依頼者それぞれの行動ガイドラインが制定されているのでトラブルになりにくい
- 相談、依頼、納品などの各ステップをサイト側のフレームワークでスムーズに行える
あたりの恩恵がとても大きいです。
支払いについてですが、声優さんとの直接取引の場合、全額前払いや着手金として半額前払いなどが普通で、支払い方法も口座振り込みやギフト券などになりがちです。また、万一トラブルに発展した場合、双方に対して公平かつ客観的な視点を持つ第三者が存在しない為、費用の返金は見込めないと思った方がいいでしょう。依頼サイトを経由していれば、声優さん都合による未納などが発生しても、サイト内通貨などで返金されます。
ガイドラインについてですが、依頼サイトでは「こうしないといけない」「これをしてはいけない」という事が具体的、かつ丁寧に説明されています。双方がこれに従うことでトラブルの発生をある程度は抑える事ができます。10分もあれば目を通せる程度の分量しかありませんので、「声優さん向け」「依頼者さん向け」両方のガイドラインに目を通しておくことをお勧めします。
実際に依頼を出してから音声データを受け取るまでには、結構な回数のやりとりが発生する場合があります。これらをメールやSNS等で都度行うとなるとそれなりに煩雑な作業となりますが、依頼サイトを利用すれば、いま取引がどんな状態なのか、次に自分がすべきことは何か、などが明確になりますし、話し合って双方で取り決めた事柄もログとしてしっかりと残ります。
記念すべき1作目の製作を円滑に進める為にも、依頼サイトの利用を前向きに検討してみてください。
次回の話
次回は編集作業について、お話したいと思います。
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